柑橘の貯蔵管理と貯蔵庫②

柑橘の貯蔵管理と貯蔵庫②

柑橘の貯蔵管理と貯蔵庫①で触れましたが、
中晩柑(甘夏やデコポン(不知火))の貯蔵管理は
非常に難しくかつ経営的にも重要なポイントです。
至極当然のことですが、
無事に収穫を終えた果実は全て、良好な状態で
お届けしたいのが、園主(農家)の望みです。

「貯蔵管理」のポイントとして、芦北地域振興局の
農業普及・振興課の指導によると以下の貯蔵条件が
上げれます。
・庫内温度 5℃~10℃
・湿度 85%~90%
貯蔵中は果皮を乾燥させ過ぎないため、
ポリ袋やPプラス(鮮度保持資材)で個装する。
個装できない場合は、
新聞紙やタイベックで収穫したコンテナを覆う。
床がコンクリートの場合は打ち水・散水で加湿する。

皆さん、イメージがつくでしょうか?
簡単に説明するとすれば、家庭用冷蔵庫の野菜室ですかね。
この条件を満たすには、巨大な野菜室が必要?という
ことになるのです。
現実的に個人の農家が数百~数千個のコンテナを
貯蔵する冷蔵庫を備えるのは厳しいのです。

そこで先日、建築業から農業に参入されて、
デコポン(不知火)を生産されているKさんが
ユニークな貯蔵庫で管理をされていると情報を
頂き、貯蔵庫の見学をさせて頂きました。

Kさんが教えて下さった、管理ポイントは
次のようなものです。

【貯蔵庫編】
①倉庫の構造はブロック壁!!
②家庭用エアコンを装備して室温を17℃設定

ブロック壁の長所としては安価で、耐火性、耐久性に
優れること。また気密性に優れることから外気温の
影響を受けにくいことが良いそうです。
デメリットとして一般的に防湿性に劣ることが上げられます。
柑橘の貯蔵は冬場ですので、室内の湿気が外に出づらいことは、
この場合はメリットですね。
※但し、エアコンを使用しますので、結果的に庫内は
非常に乾燥するそうです。
→乾燥対策は後ほど紹介します。

エアコンは庫内の温度を安定的に保つには必須のようです。
17℃の設定は家庭用エアコンのおそらく最低設定温度で
あること、JAの貯蔵庫の管理温度が17℃程度であることから
設定温度に採用しているそうです。
エアコンの稼働は2月~出荷を終えるまでの5月中旬まで。
24時間稼働(17℃以下の低温時は稼働していない)させて
いるそうです。

【貯蔵管理のポイント】
①予措の期間は収穫後2週間!!
②予措後は全量をPプラス(鮮度保持資材)で個包装!

この貯蔵管理のポイントは少しイメージが難しいと思います。
予措の期間2週間は、柑橘農家としてはまだ適切な水分を
飛ばせた状態にないことが一般的だと思います。
これは、②のPプラス(鮮度保持資材)に個包装することから
徐々に呼吸をさせて安定的に長期保存するために、
結果的に良いとのことでした。
加えてエアコンで通常より乾燥状態であることから、
予措での水分調整は控えめが良いとのお話を頂きました。

最後に、肝心の実績です!!
この倉庫では、以前は6%~7%あった腐敗率が
2%前半はまで減少したそうです。
Kさんは30tのデコポン(不知火)の生産量があるとのことで、
腐敗率7%→2%の改善は重量にして2.1t→0.6tへ減少したことに
なります。 

ご自身のキャリアと農業経営に真摯に取組まれる結果ですよね。
本当に勉強になりました。
見学中、こっそりとブロック倉庫の建築費用を教えて頂きました。
ここでは明かせませんが、手の届く金額でした。
園主も近い将来導入したいとワクワクしています。