2026年6月3日(水)
昨日、九州南部を襲った台風から一夜が明けました。
お陰様で当園には大きな被害は見られず、ホッとしています。
しかし、報道を見ると多くの農家さんや農産物への
深刻な影響があったのも事実で、同じ生産者として心が痛みます。
👆台風が去り、本日予定通り「うるち米、
酒米、もち米」の種まきができました。
さて、昨今の情勢について少し思うところがあり、
ブログ記事とさせて頂きます。
それは「ナフサ不足」による農業資材の高騰と、
供給不安についてです。
※今日の農業新聞も一面で記事にしていましたが、、、。
すでに多くの報道や新聞などでも説明されている通り、
「ナフサ(粗製ガソリン)」は原油を蒸留して
最初に取り出される液体です。
いわば「石油化学製品のすべての出発点」となる
極めて重要な存在です。
このナフサをさらに熱分解することで、
エチレンやプロピレン、ベンゼンといった
基礎化学品がつくられるそうで、それらが日常のあらゆる
プラスチック、インク、接着剤、塗料などの原料になります。
私たちの身近な農業に目を向けても、
その依存度は圧倒的です。
マルチフィルム、ハウス用ビニール(POフィルムや塩ビ)、
育苗箱、さらには出荷用の防曇袋、ネットに至るまで、
農業資材のほとんどがナフサの
「落とし子」たちなのです。
裏を返せば、ナフサの原価上昇や供給ストップは、
私たち農家の首を直接絞めることを意味します。
私の住む熊本県では、プラスチック製の
「みかん集荷用コンテナ」が盗難に遭い、
メルカリで転売されるという信じられない事件まで発生しています。
真面目に働いている農家の足元を見るような行為に、
激しい怒りが湧いてきます。
ただ、昨年の「米不足」の騒動といい、
今回の「ナフサ不足」騒動といい、
詳細は違えど本質的にはまったく同じ構造に思えてなりません。
国(政府)はマクロの視点、つまり国全体の総量としては
「供給量は足りている」との情報を出してくれています。
しかしながら、現場の実態は異なります。
商社、化学メーカー、卸業者などの間で、
「これからもっと値上がりするかもしれない」
「手に入らなくなる前に確保しよう」という
「仮需要(先回り買い・在庫の抱え込み)」が確実に存在しています。
この流通の途中で引き起こされる「人為的な渋滞」のせいで、
一番最後尾にいる川下の現場(農家)への供給が滞り、
価格が吊り上げられてしまいます。
資本主義経済、市場原理である以上、
彼らのリスクヘッジという側面もあり、
この現象そのものを一概に非難することはできません。
しかし、ここで納得がいかないのが、
私たち農家が一番の拠り所としているはずの農協(JA)の対応です。
この情勢下、JAの窓口からは次のような説明を受けました。
「農業用ビニールは3割以上値上げします」
「注文をいただいても、メーカー側から『過去の実績に応じた分』
しか入ってこないため、確実に供給できるかは分かりません」
この説明をしてくれる現場の職員さんに責任がないことは重々承知しています。
実際のメーカーや、その上にいる経済連、
全農からの通達通りに動いているだけでしょう。
ただ、ここで疑問が浮かびます。ネットで調べてみると、
値上げもせず、納期も通常通り流通させている
一般の民間資材業者さんが厳然と存在するのです。
「この差は、一体なんなのでしょうか?」
農協(JAグループ)は本来、
スケールメリット(大量一括購入)を活かして、
民間の単独業者よりも「安く」「安定して」資材を仕入れ、
組合員である農家に還元するために組織されたはずです。
しかし、このような緊急事態において露呈したのは、
組織が巨大で硬直化しているがゆえの弱点です。
全農ルートという単一の巨大なサプライチェーン(供給網)に
依存しきっているため、メーカーからの値上げや出荷制限の要請を、
何のクッションも挟まずにそのまま右から左へ
現場の農家に流すことしかできない。
これでは、何のための全国組織なのか分かりません。
一方で、値上げを耐えている民間業者は、
海外からの独自ルートを開拓したり、
市場の先を読んで値上がり前の在庫を確保したりと、
生き残りをかけて必死に経営努力(融通)を効かせています。
この「現場対応力の差」が、そのまま価格や供給の差として
現れているのではないでしょうか。
答え合わせはまだまだ先になると思いますが、
個人的には、世界的な需給バランスや投機マネーの動きを見ても、
近い将来にナフサは必ず値崩れ(暴落)する
局面が来ると踏んでいます。
しかしきっとその時でさえ、JAや大手メーカーからは
「ナフサが高騰していた時期に仕入れた在庫があるため、
すぐには下げられない」といった理由をつけられ、
価格はなかなか下がらないのでしょうね。
過去の肥料や燃料の高騰時が、まさにそうであったように。
だからこそ、私は今回の状況において、
「パニックに躍らされて、今の天井価格で必要以上の資材を
買い込むことはしない」という決断をしました。
手元の在庫と向き合いながら、冷静に静観するつもりです。
私のこのような意見に対して、
不快な気持ちになられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、常に「農家の味方」であり、「最後の砦」であってほしい農協(JA)。
こうした有事の情勢の時ほど、
民間に負けない交渉力と泥臭さを持って、
現場を守るために頑張ってほしいと切に願います。
ふと、会社員時代に出会った、同世代の
「全農」の方々の言葉を思い出します。
彼らは当時、 「自分たちには、民間商社には
絶対に負けないパイプとスキルがある。
同じ土俵で戦えれば、絶対に負けない!」
その言葉を今でも覚えています。
全農に、そしてJAにそれほどの底力があるのなら、
今こそその圧倒的なパイプとスキルを、
私たち農家を守るために発揮してほしい。
この未曾有の事態を共に乗り越えるための、
力強い手助けをしてくれることを、切に期待しています。