【農家ハンター】令和8年度の捕獲日記(目標25頭)【現在 11頭目:シカ&イノシシ】+地震の翌日、猛暑と工事と命の授業

2026年7月29日(水)

令和8年熊本地震の発生から、一夜が明けました。

昨夜は激しい揺れに不安を覚え、眠れぬ夜を過ごされた方も多かったのではないでしょうか。
震度5強を観測したここ熊本県津奈木町ですが、
奇跡的に大きな被害もなく無事に朝を迎えることができました。

町を南北に走る国道3号線では、昨晩遅くまで救急車や消防車のサイレンが頻繁に響いていました。
おそらく隣の八代市から、水俣や鹿児島方面へと緊急搬送される車両だったのだと思います。
被災された皆様の無事をお祈りするとともに、過酷な状況下で救助や支援に奔走されている方々には
頭が下がる思いでいっぱいです。

思いがけない「父子の日」と、町の電気屋さん

幸いにも大きな余震はなく明けた今朝。
いつも通り農作業へ向かいたいところでしたが、
息子が通う「学童保育」は安全のため臨時閉所に。
妻も仕事があるため、急きょ私が一日息子を見ることになりました。

「これもまあ、いい機会かな」

そう思って腹をくくった矢先、スマホが鳴りました。
お世話になっている町の電気屋さんからです。

「地震の影響でこれから何かと大変になるかもしれないから、
先に配線工事を済ませちゃうよ!終わればこの暑さでも快適に過ごせるでしょ!」

実は我が家、猛暑にもかかわらず「同時に2台以上のエアコンを使うとブレーカーが落ちる」という
課題を抱えており、配電盤ごとの交換工事を依頼していたのです。
こんな大変な状況下で、真っ先に駆けつけて下さる地域の方の情熱と優しさ。
本当に感謝しかありません。

プロのみごとな手際を息子とふたりで見惚れているうちに、
工事は無事完了! エアコン3台に電子レンジやオーブンをフル稼働させても
ビクともしない電源回路に感動しつつ、ひと安心した……その直後のことです。
再びスマホが鳴り響きました。

農家仲間で果樹園を営んでいる「きくりん」からです。

「シカ!シカ!シカ!大きいのがかかってますよー!」

被災地で命を奪うということ――息子と向き合った現場

「うわぁ、どうしよう。今日は息子もいるのに……」

狩猟で捕獲した獲物は、命あるうちに速やかに止め刺し(とどめ)を行い、
適切に処理しなければなりません。しかし、今日は震災の直後。
被災して苦しんでいる方々がいる中で、自らの手で動物の命を奪う行為に向き合うことへの、
複雑な葛藤やためらいもありました。

でも、同時にこうも思ったのです。 みかん山を荒らす獣害から農作物を守ることも、
私たちの暮らしや食を支える大切な仕事。
そして、命をいただく現場を隠さず見せることは、
夏休みの息子にとってかけがえのない教育になるのではないか、と。

意を決して、息子を連れて現場へ向かいました。

現場に到着し、まずは安全を確認。
車から息子を降ろし、立派な牡シカの前に立ちました。

なぜこのシカを捕まえる必要があるのか。
みかんの木や畑がどんな被害を受けるのか。
そして、農家の暮らしや命がどうやって成り立っているのか。

言葉を選びながら、息子に説明しました。
そして、その命が消える瞬間を、じっと見つめていました。

息絶えたシカの前で、ふたりで静かに手を合わせ、弔いました。
酷暑のなか、嫌な顔ひとつせず真剣に命と向き合う息子の横顔に、
父親としてどこか誇らしい気持ちが込み上げました。

今度はイノシシ!地域の温かい手に救われて

これで一安心……と、念のため他の罠も見回りに入った時のことです。

「……次はイノシシだ!!」

これまた立派で若いオスがかかっていました。
同じように安全を確保して息子を近づけたものの、
相手は荒々しいイノシシ。さすがに迫力に押されたのか、
息子は少し腰が引けて不安そうな表情を見せます。

「パパが処理してくるから、ここで待っててね」

そう声をかけたものの、不安気な息子を一人にするのは気が引ける……そんな絶妙なタイミングで、
通りかかった先輩農家のご夫婦が声をかけてくれました。

「すいません!少しの間子どもをみて頂けませんか?」

快く快諾頂き、お言葉に甘えて息子をお願いし、私は一気に職務を遂行。
無事に止め刺しを終え、搬出することができました。
驚きつつも無事戻った私とイノシシを迎えてくれた息子と、
再び一緒に手を合わせました。

困った時にさりげなく手を差し伸べてくれる地域のつながりに、
この日何度目かの「感謝」を噛み締めました。

生きているからこそ、前を向く

思わぬ1日での「2頭捕獲」。これで今年度は累計11頭目となりました(今年度の目標は25頭!)。

地震という未曾有の事態の中、今も不安な夜を過ごされている方がたくさんいます。
そんな中で命を奪い、命をいただき、農地を守るという日常の営みを続けることには、
どこか胸が締め付けられるような思いもありました。

けれど、命の尊さを噛み締め、地域の人々と助け合いながら
「今、自分にできること」を懸念なく一生懸命にやること。そ
れこそが、責任なのかもしれません。

猛暑と地震、波乱に満ちた1日でしたが、
息子の成長と人の温もりに救われた日となりました。
被災された皆様に一日も早く平穏な日々が戻ることを願います。

大地と甘夏

KATO果樹園 園主 大学卒業時に将来農業で起業することを決意。 食品会社、JA職員、製薬会社での勤務を経て、 2023年、就農に向けて熊本県芦北地方に移住。 2024年、念願の就農。 現在、甘夏(70a) 、施設デコポン(12a) 、 露地デコポン(20a) 、黄金柑(5a)、 一寸ソラマメ(5a)、お米(30a)の 生産規模で経営。 「ブルーベリー」「にんにく」の生産挑戦のため準備中。